2013年2月17日日曜日

半導体アナライザ“DCA55”vs“DCA75”使いくらべの巻 (Part-2)

2月09日の記事で中途半端に終わってしまった半導体アナライザ2機種の使い比べ、その後の測定結果なんぞをご紹介しておきたいと思う。


定対象の方は、色々悩んでみたけど(笑) とりあえずこんな感じで。

 ・2SB32 (神戸工業 =現富士通テン)
 ・2SB101 (日本電気)
 ・ST343サンプル1 (2SB165相当:日本電気)
 ・ST343サンプル2 (同上)
 ・2SD186 (三洋)


DCA75で追加されたカーブトレースの機能なんかを使おうとしても、実情としてはあまり広範囲のターゲットには対応しておらず、イマドキの高性能デバイス(というか一般的なシリコントランジスタ)なんかを測定しても「あまり面白くない」というのが正直なところかも。
対象デバイスに加えることのできる電圧レンジとしては、高々12V程度、流すことのできる電流も10mAちょっととあっては、イマドキのトランジスタなんかは隅々まで調べてやることは不可能だ。

ということで、昭和世代に大活躍してくれた“ゲルマニウムトランジスタ”を5種類ほど出してきた次第。 こちらでご紹介したモノも含まれているが、何せ古いパーツなもんで耐圧自体が低く、特性も(最近の素子と比べると)あまりよろしくない。 おまけに素子自体の劣化と思われる現象も知ることができるというオマケ付きで、結果から言うとかなり楽しませてもらったというところかな(笑)

DCA君が出してくれた測定結果に納得が行かず追加測定が必要になったりと、結果をまとめるのにめちゃくちゃ手間がかかったというのは置いといて とりあえず始めてみますかね・・・

▼2SB32                  

ップバッターは 2SB32君。 確か私が小6か中1の頃だったと思うけど、中古車スクラップ置き場に工具一式を持って忍び込み(笑) 外してきたカーラジオに使われていたと思われるトランジスタだ。

DCA55での測定結果は特に問題なしという感じで、まずは一発認識してくれた。
これなら、現役で動作してくれそうな感じかな。

ちなみに、DCA55は「テスト」ボタンを押してアナライズ後、結果が表示されたら「スクロール」ボタンで結果を先送りさせないといけないのだが、同じような写真を何枚も並べるのは面白くないので、今回は久しぶりに“アニメーションgif”に加工してみた次第。
しかし・・・ アニメーションgifって、こんなに加工が面倒だったっけかな・・・ (汗;



に、DCA75でIC-VCEカーブを測定してみたところ。

ちなみに、DCA75で「Graphic」メニューから測定したい項目をONにしてタブを開くと、スキャンする初期値が設定されて出てくるのだが、あまり最適ではなさそうな感じがしたのと、グラフも初期値では5本しかプロットされないようなので、一度描画させて確認した上で私自身が値を入れ直して再プロットさせたものをご紹介することにした次第。

上記の例では、最低ラインが少し上に上がっているのと、グラフの右側、つまりVCEが上がると急激にグラフがせり上がっている様子が伺える。

おそらくは ICBOが多いのと、このトランジスタのVCBO自体が20Vと低いためだろうか電圧依存性が高いのではないかと思われる。 そのせいか、規格表に掲載されているhFEよりも少し値が大きそうな感じもする。



いうことで、ICBOの値を確認するための追加測定をやってみた。

エミッタにつながっているブルーのリード線を外し、ベース~コレクタ間をダイオードとして認識させてみた。
そして逆方向に流れる電流をプロットさせてみると・・・ 6V付近から電流が流れ始め、12Vでは何と200uA近くになってますなぁ(苦笑;
規格表の値を引用すると、12Vで14uAが最大値らしいので少々劣化気味というところか。 冒頭で「これなら、現役で動作してくれそうな感じかな」なんて書いてしまったのだが、もしコレをちゃんと動かしたいなら「電圧は控えめに」というところだろうか。

▼2SB101                  

レも私が中1の時だったと思うが、当時の級友宅の近所にあったガレージに、麻袋詰めされた正体不明の基板が大量に放置されているのを見付け、何枚か拝借してきた中に使われていたものだったと記憶している。 次にご紹介する ST343の付いている基板も混ざっていたっけ。

余談が先行してしまったけど、DCA55での認識も特に問題なしかな。



DCA75での認識、カーブトレースとも全く問題なしですかね。
ICBOの影響も特に見られず、素直なカーブがプロットされている様子が伺える。

hFEはそんなに大きくないけど、この個体ならおそらく何の問題もなく動作してくれそうな感じがするね。

▼ST343 (サンプル1)            

型番のサンプルを2つ出してきたんだけど、理由を最初にお話ししておくと「シリコントランジスタ」と誤認される個体が混ざっていたので特性を比較するためだったりする。

DCA55では、VBEが0.72Vと大きいことしか判らなかったりするのだが・・・



DCA75での測定結果も、最初の認識で VBEが0.766Vとなっていてほぼ同様。 カーブトレースのグラフも問題なしという感じだ。



して追加測定。 VBEの認識がおかしいということでコレクタにつながっている赤色リード線を外してダイオードとして再認識させ、IB-VBE特性を調べてみることにした。

まぁ何と言いますか・・・ 傾きがめちゃくちゃなだらかですなぁ(笑)
これも劣化と言うべきなのか、「ベース広がり抵抗増大症」とでも診断しておきますかね。

▼ST343 (サンプル2)            

型番のサンプルその2、こちらはきちんと「ゲルマニウムトランジスタ」と認識してくれたようだ。



DCA75でも認識は特に問題ないようだ。
カーブトレースの方はややICBOの影響が見られるような気がするが、特に心配するほどではないように思う。



してサンプル1同様にダイオードとして認識させ、IB-VBE特性を追加測定と。

先ほどのサンプルと比較してみると、やはり一目瞭然ですな。 電圧レンジが違っているので比較しにくいところがあるけど、傾きはちゃんとしたゲルマニウムトランジスタのそれですワ。

▼2SD186                  

ストバッターは我が家でも数少ないNPNゲルマニウムトランジスタの2SD186君、結果から申し上げるなら正直言って「めちゃくちゃ振り回されてしまった」というのが実感かも知れない。


前、昨年4月にDCA55を買ったときにもテストでこのトランジスタを使わせてもらったんだけど、きちんとトランジスタとして認識できない現象が発生した「ややこしいデバイス」でもある。

当初は何故か「Sensitive or low power thyristor」という認識になってしまい、その時は諦めてまたジャンク箱にしまい込んでいたという訳なんだけど、DCA75で試しにテストしてみるとこれがOKなのね・・・(笑) で、DCA55で何回かリトライしてみたところ、認識するときがあったと(大笑)

エミッタ~コレクタ間にダイオードが逆接続されているように認識されているのと、ものすごくhFEが低い(だからちゃんと認識されなかった?)のは気になるけど、とりあえずは試験続行と行きますか。


いうことで、IC-VCEのカーブをトレースしてみたの図。
hFEがすごく低いことを除いては特に問題点らしきところは見付からず、プロットされたグラフだけを見ていると「とても素直な結果」というべきか。


して追加実験その1。 ダイオードが逆接続された状態での認識を検証してみる。
定石に従い、ベースに接続された緑色のリード線を外して再認識させると。


~む・・・ 何か見えたような気がする(苦笑;
これって、ダイオードのVF特性なんかぢゃなく、単に劣化して多めのICBOが大きめのhFEで増幅されただけなのかも知れませんなぁ・・・

で、最初のデバイス認識状態を再確認してもう一つネタが出てきましたゾ。
何と「エミッタとコレクタを逆認識してくれている」という事実(大笑)
私はいつも青をエミッタ、緑をベース、赤をコレクタに接続してテストするようにしているんだけど、入れ替わって認識されていることに今まで気が付いてませんでしたなぁ・・・



~ん、ICBOの確認をしようと調べてみるも、一目盛り(100uA)の半分にも満たない値。 なので即劣化しているという判定はできないけど、規格上の最大値は 20Vで15uAなんで「たぶん規格値よりも少し多いだろう」ということになるのかな。


後の最後ということで、ICBOの影響を軽減するため、ベース~エミッタ間に適当な抵抗をパラって再認識させてみるの図。

予想は当たっていたか・・・(笑)
ベース~エミッタ間に抵抗を入れたことでコレクタとエミッタを逆認識する現象は解消され、hFEも正常に認識されたようだ。

相変わらずダイオードが認識されているのは、先ほどのICBOの影響と同じく、ベース~エミッタ間に挿入した抵抗が逆方向にも動作する「BC逆ジャンクショントランジスタ」に影響を与えているものと思われる。 ちなみに、3.3~10KΩ程度まで抵抗を付け替えてやるとこのあたりの現象も変化し、10KΩではダイオードが検出されなくなったことをご報告しておこう。


いうことで、気を取り直して再びIC-VCEのカーブをトレースしてみる。
ちなみに、パラった抵抗は4.7KΩね。

こんどはバッチリという感じですかね
ちょっとグラフの下側が下がっているのはベース~エミッタ間にパラった抵抗の影響が出ているようなのと、ベース電流を多めに流したときのカーブがちょっとキタナイかなとも思われるけど、今回はこのあたりでお開きにしておきたいと思う次第。

▽終わりに                 

「ゲルマニウムトランジスタ」をキーワードにして色々調べていると、最近はギターのエフェクターに使おうとして買い漁っている輩が増えてきているように感じる次第。
おそらくどこかの有名メーカーのエフェクターにゲルマニウムトランジスタが使われていて、それのコピーを作ってみようという考えなのかも知れないけど、私が思うに「すでに良質なゲルマニウムトランジスタはそんなに豊富には残っていない」のではないかと考えてしまうのね。
古くからトランジスタを販売しているショップの在庫が買い漁られているのも結構目にしてきたのも事実だったりするんで、今後はあんまり入手性に期待しない方が良いだろう。

まぁ私の手元にあるデバイスは大半が中古品で保管状況も良くないということもあるんだろうけど、ICBOが規格値より増えている個体がけっこうあったし、長期在庫品が新品で入手できたからと言ってそのままノーチェックで使うとトラブルに見舞われることがあるかも知れない。

「私は多めに買って選別するからいいヨ」って言う人も居るだろうけど、中には選別してふるいにかけた残りを転売する輩が居る可能性もあったりするワケで・・・ コワイねぇ(大汗;

どっちにしても、ゲルマニウムトランジスタをこれから使おうとするなら「特性チェックができる」「No、Go判定ができる」ことが最低条件ではないかと考える次第。
その上で「特性が落ちてきているデバイスでも使えるよう、回路を手直しすることができる」実力をお持ちであればコワイモノなしなんだろうけど・・・

今回はDCA75を購入して「ゲルマニウムトランジスタの特性を調べる」という用途に使ってみたんだけど、ズバリ「買って良かったか?」と聞かれるとどうなんだろうね(笑)

 ・測定範囲が狭い
  シリコントランジスタには狭すぎるけど、ゲルマなら(笑)
  ダイオードのVFとか、肩特性調べるには結構便利。
 ・価格が高い
  しばらくしたらもっと安いの出ませんかねぇ(笑)
 ・自分で作れるんぢゃないの?
  少し頑張れば作れるけど、そこまでヒマはないよねぇ(苦笑;


私はとりあえず「買って良かった」ということにしておきましょうかね

ちなみに、半導体カーブトレーサーを自作した人も結構居るようで、手近なところではトランジスタ技術2003年9月号~10月号に「個別半導体の特性パラメータ測定器の製作」という記事が掲載されているし、もっと簡単なハードウェアはWeb上でも掲載されているのを見かけたことがある。

昔々の記事でトランジスタ技術1975年8月号の「電子ホッケーの製作」コピーサービスで入手した話題を記させてもらったが、同誌には中古オシロスコープを改造して半導体カーブトレーサーを自作した人の記事も掲載されていたのを思い出した(笑)

こっちもまとめてコピーサービス頼んどくんだったなぁ・・・ 

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