前回 Part-2の最後で予告させてもらった通り、今回はちょいと Nutube君のヒーター用電源を安定化しておきたいということで、そのための回路を実験して組み込むところまでをご紹介しておきたいと思う。
まぁ本来のこのキットが想定している “ニッケル水素電池×2” を電源として使う分にはアルカリ乾電池ほどは電圧も変動しない。 不要な回路というのも確かなので、必要とされない方は「ふ~ん、そうなの・・・」程度に聞き流していただければ、と。 今回のネタが無事に解決できたということでこの上にも写真を貼っておくが、ひとまず “改良ネタ” は今回でラストのハズなのでご安心を(笑)
ということでコチラの写真が今回分のスタート地点、Part-2の最後でネタ振りさせてもらった環境から
ブレッドボード上に載っている部品は意外と少ないのだが、これでとりあえず Nutube君のヒーターにかかる電圧をトランジスタの VBEと同じ電圧に安定化されるように組んでみた。 言い方を変えれば、入力電圧がある一定のレベルを超えない間はバルブとなる制御素子がそのまま素通しとなり、ヒーターと 56Ωの抵抗で分圧されたヒーター側を監視しているトランジスタが “ON” になりそうになったところで、フィードバックがかかってバルブが閉まるという寸法。
ひとまず主要部品としては、半導体×3、抵抗×3、それとバイパス用の電解コンが 2個。 回路の占有スペース (どこに組み付けるか) という観点で考えると、この電解コンがなければ楽勝なんだけどね・・・
前回ご紹介した時点ではまだ十分に動作確認ができておらず、特性も取っていなかったので、まずは少し調整。 そしていつものように実験用電源を接続して入力電圧を振って、特性を取ってみた
回路はこんな感じ。 この回路を入れない場合は、上の図の V+と F+が直接つながって素通しになっていると考えてもらえば OKだ。
ここで上の回路図を見ていただくと、まず制御素子として Pch MOS FETが入れてある。 ここに使っている DMG3415Uは VGSが低い電圧でも ONになり、かつ大電流が流せる素子で、VGSが 1.8V時の特性がデータシートにも掲載されているのが頼もしいところ。 そして、ゲートと GND間には J-FETが入れてあるのだが、一見してコレは “定電流回路” そのものだ。 しかし定電流回路が流せる電流値よりも遙かに少ない電流で MOS FETは ONになるため、初期状態ではほとんど素通し状態となり、Nutube君のヒーターは R21(56Ω)の抵抗が直列に入って GNDに電流を流す状態になる。
ここで F+と F-間に接続してあるトランジスタの VBEが 0.6Vを超えてベース電流が流れ始めると、コレクタに接続してある J-FET (すなわち定電流素子) のソース電圧を上昇させることになる。 この動作が J-FETに流れる電流を減少させ、MOS FETの VGSを下げることで F+にかかる電圧が下がり、結果としてフィードバックがかかるという寸法だ。
ブレッドボード上に回路を組んだ後少し調整したんだけど、大体思っていた通りの動作になったのは幸いなところかな。 元々指定されていた Nutube君の F-と GND間の抵抗は 56Ωなのだが、その状態でヒーター電圧が 0.6V強になるよう制御すると、少し F+の電圧 (これは直熱菅である Nutube君のカソード電圧と等価=グリッドへの負のバイアスとなる) が高くなるように感じたので、2.3V程度で安定する 47Ωに置き換えておきたいと思う。
それと、この回路の基準電圧はトランジスタの VBEを基準にしているので誤差が発生する。 主なものはトランジスタ 2SA1162の hFEで、小さければベース電流が多く流れるのでヒーター電圧は上がる傾向。 それと 2SK2881-Dの VGS(OFF) が大きくなる (IDSSが多いものと等価) とソース電圧を大きくしないと制御できないのでやはりヒーター電圧は上がる傾向になる。 もちろんだが、10mVとか 20mVとかの誤差をあんまり気にするのはナンセンスなので、ほどほどにしておくのが吉、と。
ちょいと説明が長くなったかな ということで、ブレッドボード上に組んだ回路をバラして、一部の部品をチップ品に置き換えて薄手のユニバーサル基板にマウントしたところ。
こんな感じで Nutube君とドッキング、ホットボンドで軽く固定しておいた
ヒーター用の端子も半田付けやっつけて、中央の 2本 (F-と GND)、それに V+は外部との接続が必要なので、それぞれスズめっき線と細めの線材を引き出しておく。
Nutube君とドッキングできたところで、ひとまず実験用電源を接続しての動作確認。
ヒーター電圧は 0.631Vと実験で取った表中のデータよりも少し高めになったのだが、実はコレは狙い通りの結果ね
元々は 2SA1015-GRを使って実験したのを取り外して hFEを確認すると 210程度と、GRランクにしては低めの値だった。 手持ちのチップ品の 2SA1162-GRを 2~3個確認したところ hFEは 250以上のものばっかりで、自分としてはもう気持ちだけヒーター電圧を高くしたいと思っていたので 2SA1162-Yを出してきた。 ここで hFEが 180程度のものが早速出てきてくれたので、これに決定したという経緯がある。 あと、2SK2881-Dは前回の DC/DCで基準電圧の安定化に使ったのと同じ IDSSが 3.1mAのものを使っておいた。
最後は基板に取り付けて・・・と
淡い緑色の輝きは、やっぱり癒やされますなぁ~
はい、こんな感じであとは一気に組み上げてしまいましょ~かね
ではでは、ひとまず今日のところはこの辺で・・・
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